モヤモヤしているとき、決断してはいけない?―思考、感情、情報がそろう前に決めないための視点―

なぜか決められない。そのモヤモヤの正体
「早く決めた方がいい」「行動しないと進まない」そんな声に背中を押されながらも、心のどこかでストップがかかる瞬間。
そのとき私たちは、自分を優柔不断だと責めがちです。でも実は、決められないのには構造的な理由があります。
心理学者ロバート・フロイドらが提唱した「決断の階層モデル」によれば、意思決定には以下の3要素が必要だとされます:
- 情報の整理
- 感情の処理
- 行動へのイメージ
このうち1つでも欠けていると、脳は無意識に「今はまだ決めるべきではない」と判断し、行動を保留するのです。
つまりモヤモヤとは、心のブレーキではなく準備不足のシグナル。その感覚を軽視せずに受け取ることが、結果的に良い決断を生みます。
決断を急ぐと、後悔の連鎖が始まる
「早く白黒つけたい」という欲求には、危険が潜んでいます。
意思決定理論の研究では、過度な時間的プレッシャーがかかると、人はリスク回避傾向が強くなり、視野が狭まることがわかっています(Maule, 2000)。
また、一度下した決断を自己正当化する心理(認知的不協和の解消)によって、本当は納得していない選択を正しかったと無理やり信じようとしてしまうこともあります。
結果として、自分の感覚とのズレが後々まで残り、意思決定の軸が揺らぎます。
「決めない勇気」は知性のひとつ
迷いの中にあるとき、私たちは考えすぎているのではなく、まだ材料が出そろっていないだけかもしれません。
スタンフォード大学の心理学者ジェニファー・L・Eberhardtは、不確実性の高い状況下では「一時保留という判断が最善である場合もある」と述べています。
自分が判断停止に陥っているのではなく、「まだ判断に適さない」と正しく見抜いているのだとしたら、それはむしろ知性の働きです。
決断の前に、「流れ」を整える
十分に情報を得て、感情が落ち着き、未来に向けた行動のイメージが湧いてくる。
その3つが揃ったときに、決断は選ぶものではなく、自然に起こるものへと変わります。
まずやるべきは、思考と感情の可視化です。
- 頭の中でモヤモヤしている要素を紙に書き出す
- 感情の言語化(例:焦り、不安、罪悪感)
- どの要素が「今」決定を妨げているのかを見極める
このプロセスを踏むことで、流れは静かに整い始めます。
「決めなくていい」もまた、選択肢
現代の働き方やライフスタイルは、意思決定の数を爆発的に増やしています。
ハーバード・ビジネス・レビューでは、平均的な大人が1日に行う意思決定は35,000回以上にのぼるとされています。
この中には重要な判断も、とりあえずの選択も含まれますが、どれだけ自分のリソースを残しておけるかが、その日の“質”を決めます。
今すぐ決めなくてもいいことを保留する、あるいは「一旦、選ばない」と決めることも、実は非常に戦略的な行動です。
アートが教える「未決断」の力
レオナルド・ダ・ヴィンチは『岩窟の聖母』を生涯2度描きました。
1度目の作品は未完成のまま残され、彼は10年後、新たな構図とともに“再決断”するようにもう1枚を描いたのです。
「まだではない」と感じた自分の直感を信じて、先延ばしすることを選んだその姿勢こそ、芸術家としての美意識でした。
未決断とは、妥協しないという意志のあらわれでもあります。
いま、モヤモヤしているあなたへ
決断できないのは、迷っているからではありません。
本当は、自分にとって何が大切かをちゃんと見ようとしているから。
その姿勢そのものが、すでに決断のプロセスの一部です。
決まらない今こそ、自分の本音と丁寧に出会える時間。
その余白を、ぜひ信じてみてください。
参考文献
- Janis, I. L., & Mann, L. (1977). Decision Making: A Psychological Analysis of Conflict, Choice, and Commitment
- Festinger, L. (1957). A Theory of Cognitive Dissonance
- Kahneman, D. (2011). Thinking, Fast and Slow
- Maule, A. J. (2000). Cognitive processes in risky decision making
- Eberhardt, J. L. (2019). Biased: Uncovering the Hidden Prejudice
- Leonardo da Vinci, The Virgin of the Rocks (1483 / 1495)
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