“従順”と“協調性”は違う — 自立したチームをつくる思考と対話のスキル

“協調性がある人”とは、どんな人か?
「協調性がある人」とは、どんな人でしょう?
多くの職場では、空気を読み、反論せず、和を乱さない人がそう呼ばれることも少なくありません。
でも実際は、そのような“従順さ”は、チームの健全性をむしろ損なうことがあります。
今回のテーマは、従順と協調性の違い。
自立したチームを支えるために必要な“思考と対話の設計”について考えます。
従順さの正体:「考えないこと」の快適さ
従順とは、上からの指示に異を唱えず、波風を立てずに従う姿勢です。
ここで注意したいのは、従順であることは、必ずしも思いやりや協調心とは限らないという点です。
それは時に、自分で考えない方が楽、責任を持ちたくないという無意識の戦略でもあるからです。
結果として、チーム内で起きている問題や不合理にも沈黙してしまい、健全な摩擦や成長のチャンスを奪うことにもつながります。
協調性の本質:「目的を共有する力」
協調とは、意見が違っても目的を共有し、違いを尊重しながら進む力です。
つまり、対話を避けず、葛藤を超えていく力とも言えます。
一見「物言わぬ従順さ」の方が平和に見えますが、本質的には、意見の違いをどう乗り越えるかが協調の核にあります。
寓話に学ぶ:「魔法使いの弟子」に見る“従順”の限界と協調性の本質
ゲーテの有名な詩『魔法使いの弟子(Der Zauberlehrling)』では、若い弟子が、師匠の留守中に魔法を使い、水汲みを箒に命じて自動化します。
「古き呪文を知った今、
召し使いよ、水を汲め。」
(原詩より意訳)
最初はうまくいっていたものの、途中で水が止まらず、弟子は困惑します。止め方を知らず、命令された通りに動く箒は暴走を続け、部屋を水浸しにしてしまいます。
この詩が教えてくれるのは、命令をそのまま実行する“従順さ”は、一見便利でも、複雑な状況には対応できないということ。
これは組織やチームでも同じです。「言われたことはやります」という姿勢では、意図の変化や文脈の変化に柔軟に対応できません。
一方で協調性とは、命令の背後にある目的を理解し、状況に応じて自ら判断し動く力です。
協調する人は、必要であればリーダーに「この判断でいいですか?」と確認したり、自ら次の一手を提案できます。
つまり、従順さは命令を“なぞる”こと、協調性は意図を“解釈する”ことにこそ違いがあるのです。
実践編:協調性を育てる3つの思考と対話スキル
- ① 「意見の違い=対立」と思わない習慣
意見が食い違うことは、むしろ“目的への道の違い”の発見です。反論は敵意ではなく、貢献と受け取る視点を持ちましょう。 - ② 対話の中で“自分の思考”を言語化する
「とりあえず同意」は、従順の第一歩。曖昧なまま賛同せず、自分の立場や不安も小さくシェアする習慣を持ちます。 - ③ 「今この対話は何のためか」を確認する
単なる情報共有なのか、意思決定なのか、感情の整理なのか。目的の明確化が、対話の意味と質を高めます。
応用編:自立したチームは「正解より構造」を信じる
自立した協調が可能なチームには、共通する視点があります。
それは、正しさを競い合うのではなく、「どう考えたか」「どう対話したか」という構造を大切にすること。
誰の意見が勝ったかではなく、対話をどうデザインしていくかが、成果を左右します。
だからこそ、従順な沈黙よりも、不器用でも誠実な対話が、チームの信頼を深めていきます。
まとめ:従順はチームを黙らせ、協調はチームを育てる
従順と協調は似て非なるもの。
前者は、指示に従う姿勢。後者は、目的を共有しながら関係性を耕していく力。
対話と構造を育てていけば、意見の違いも“摩擦”ではなく“熱”に変えられるチームが生まれます。
参考書籍
- 『心理的安全性のつくりかた』石井遼介
- 『LISTEN』ケイト・マーフィ
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